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マタンサス州のペドロ・ベタンコートでは、バイレ・デル・マニ(ピーナッツダンス)と呼ばれる古い拳闘の踊りの唄を再現した。ハバナ州のワナバコアでは、他のバントゥーまたはコンガ由来の唄を、さらにポリネロ(保線区員:線路の枕木の修理工)の唄、ユカの踊りとそれぞれのリズムは、カハ、カチンボ、ムラと撥を用いて老齢の演奏者によって再現された。労働歌は本来の目的を失い、ポリネロ、砂糖キビ労働者、パン屋などの古い言葉だけが残っていた。これらの歌詞は、猥雑なものを除くと日々の仕事に関する皮肉や自賛の言い回しに基づいている。
ルクミやサンテリアは、彼らの故郷の文化の要素が多く残る儀式である。バタドラムはより宗教的要素の強い儀式で使われるが、形や名称もアフリカのものと同じで、これに加えてベルやセンセーロ(チャウォロと呼ばれる牛につける鐘のようなもの)が太鼓に取り付けられ音に変化を与える。同様のことが、ヨルバ由来のさほどオーソドックスでない限られた儀式で用いられるアブウェやチェケレにも見られ、外形や名称そして奏法は同じであるが、アフリカとは異なる環境での使用に合わせて材質や構造はある程度変化した。
既述してきたヨルバ由来の音楽のいくつかは、プラセタスではベンベドラム(中空の丸太の片面に皮を張った片面太鼓)での演奏を録音し、ハバナではバタドラムで演奏されたオドゥドゥアとオバタラの曲を録音した。
ハバナ州のヌエバ・パスでは、かつてバントゥー出身のグループによって演奏されたように、老齢の歌い手や太鼓の叩き手によってマクータの唄を録音した。
ハバナ市では、ルンベーロ(ルンバ・パフォーマー)の葬列の古い唄を一曲、手拍子の入ったアララの唄を二曲、そして古いルンバ・コロンピアを一曲選んだ。同市の別のエリアでは、ウェンバの唄とアバクアのエンカメ(短いスピーチ:エフィク語)を録音した。
■収録曲
1. エンカメ - 1962年 現地録音
アバクアの男たちが儀式で延々と自分たちのルーツの説話を語る。このエフィク語で語られるパルラをエンカメと呼ぶ。位の高いしかるべきメンバー(プラザ)によって語られ、その階級に相当する神聖なドラムで伴奏される。彼は他の階級のメンバーまたはコーラスと交互に唄い、曲は説話についての唄で終わったりする。
2. ウェンバ - 1962年 現地録音
アバクアにはそれぞれの儀式のための唄が存在する。それらは常にソリストとコーラスによって交互に唄われる。歌詞は、説話や伝説についてのものである。儀式全体にわたりアフリカ起源の宗派に属する一説が復唱される。ウェンバ(魔術)の唄は秘密の部屋またはファンバ(アバクア寺院)内で唄われる。
3. ババルー・アジェの唄 - 1950年 現地録音
サンチャゴ・デ・クーバ州のサン・ルイスでは、儀式の中にルクミ・クルサードと呼ばれるものがあり、これはサンテリアとペンテコステ教会の賛美歌の要素が融合したものから成り立ち、ヨルバのオリシャまたは神々について述べられている。この神は、カトリックのサン・ラサロと融合したものである。
4. エレグアの唄
他の宗派には同じくヨルバの神エレグアを崇拝するものがあり、エレグアは道や儀式の始まりと終わりを司る。この唄は、前述のものと同様サンチャゴ・デ・クーバ州のサン・ルイスでのルクミ・クルサードの儀式にて録音された。ボク(アシコ:キューバ名)と呼ばれる樽板でできた円錐形の太鼓で広いほうの開口部に皮を張ったものや、アチェレ(マラカス様の楽器)や手拍子で伴奏される。
5. 労働の唄 〓 1948年 現地録音
我々が録音した全ての労働歌と同様に、この唄のメロディーは労働作業の動きに合わせたゆっくりしたものである。歌詞は自尊にあふれ、殖民時代から使われている十行単位の詩節から成る。唄は先導者によって始まり、それに対してコーラスが仕事道具のリズムで答えるというスタイルである。
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