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我々の活動目的のひとつは、キューバ全土に渡って現在もなお活発に行われているアフリカ発祥の民族文化の保存である。
なかでも、ヨルバやルクミ発祥のものは、島の西部地域において大きな重要性を持つ。そこはスペイン植民時代の間続いた経済的事情からアフリカ民族の奴隷が数多く見られた地域だったのだが、幸運なことに現在もなお彼らの文化、とりわけ音楽における多くの特徴が連綿と受け継がれている。
ヨルバの音楽文化は、宗教と深いつながりがある。儀礼の音楽はバタドラムで演奏される。世俗的なものはguirosかabwes、そしてベンベドラムで演奏されるが、特定の場合にはバタも組み合わせて用いられる。
ベンベは祝祭や踊り、そして音楽の名称でもある。これらに宗教的特性はないものの、サンテリアの慣習の延長と位置づけられる。なぜならこの音楽や唄は、これを享受している教導者もしくは信者たちによって、ヨルバのオリシャへ捧げられているからである。
ベンベは単なる娯楽か、またはサントの誕生日と呼ばれる信者がサントになった入信記念日を祝う場合に行われ、その様子が収録されている。
ベンベドラムはその製作や取り扱いにおいてなんら儀礼的な扱いは必要とされないが、大切に保管され使用する前に調整される。
製作地によって作り方も音も異なり、そこには異なるアフリカ民族の文化的要素の影響が見られる。
ベンベドラムは3本で、Iya、obbata、そしてerunと呼ばれる。円筒形の片面皮で、皮は釘留めされているが、イエサの影響を受けたものは、両面皮で紐で張られている。胴はヤシ、アボカド、松またはアーモンドの幹で作られ、皮には牛や馬、またはラバが用いられる。
今回収録した祭礼で使用されたドラムは、1952年製である。皮はアララのドラムの様に、胴の内側へ差し込まれる木製のガラバト(アボカドの木から作られたV字形のかすがい)によって張られている。この張り方は、修理時に鉄製のものに交換され、唯一erunのみ元来の方式が取られた。皮は牛皮が用いられている。
木材はアボカド材が使われ、Iyaとobbataは樽板を用いて作られる。erunは1本の木をくり抜いて作られる。脚のついた開口部を下にして立てられる。Erunには他の2つのドラムのように脚がついていないが(元々は、他2つもついていなかった。)代わりにもう一枚皮がつけられている。
ドラムは赤、青、白といった、属するグループの色が付けられる。Iyaは皮の縁に布とココナツの繊維で作られたmaribboの輪で装飾される。
ベンベアンサンブルでは、aggogoまたはguataca(時にはazadaとも呼ばれる農具の鍬刃)が用いられる。男性のみが演奏を許されており、7人構成で楽器を替わりながら唄の長さに合わせて演奏する。
Iyaドラムは即興演奏によって曲を始める。奏者は撥もしくは槊杖(さくじょう:銃などの火器を掃除したりするのに使う棒)を右手に持ち、左手は素手(掌)もしくは拳で叩く。
唄の盛り上がりによっては、ドラムの縁を叩いたり、2本の撥で叩かれることもある。Iya奏者は立って演奏し、erunとobbataは座って演奏される。
ドラムの並びは以下の様になる:
Obbata(座奏) Iya(立奏) erun(座奏) agogo(立奏)
また、アンサンブルにはgalloという通常ヨルバ語を用い即興で唄うことが出来るソロシンガーと、祝祭の盛り上がりによって増えることもあるが8人編成の女性コーラスが入る。唄はコールアンドレスポンスの形式をとり、コーラスはソリストのフレーズを反復し呼応する。
コーラスはドラムの前の中央で輪になって踊り、ソリストはその中に入るか、もしくは外側で唄う。全体の興奮に反応し、神が参加者に乗り移り始めると踊りも変わる。ベンベの踊りは非常にダイナミックで、絶え間なく曲が演奏されていくにつれ、その生命力に溢れた様子は次第に増してゆく。
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